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旅のおと9

Words & Photos By Masanori Nishikawa

前回は、いまとなっては命をかけたライフワークとなっている子どもたちとのぼうけん自転車旅マウンテンバイクジャーニーのはじまり、そしてこの旅をとおして僕が見つめている世界について書きました。

書きながら、あの当時の不安やヒリヒリ感を思い出しながら、あらためてこうして9年間も続けてくることができたこと、ともに旅した子どもたちとの思い出にひたりながら9回目の今回を書きはじめています。

残るは1回、ここまで踏み込んで自分の自転車旅人生を振り返ったこと、いままで無かったので本当にいい機会となりました。あらためて機会をくださったサークルズのみなさんには感謝しかありません。それでは9回目いってみましょう。

みなさん「バイブス」って言葉を耳にされることありますか?
どちらかというと、ストイックなスポーツをする人や、サイクリストよりも、ゆるめの音楽を好んで、波が立てば仕事を脇に置いてでサーフィンに出かけていくような(僕のまわりにはこんな先輩がたくさんでした)人から出てくる言葉ですよね。そのバイブスがね、僕はね、とっても、苦手だったんです。

なんやねんバイブスって。そりゃのんびりして、えがおで、みんなでいっしょに楽しめたらサイコーやけれども。みんなそれぞれいろんなこと抱えてるやないですか。いつでも笑っていられるわけじゃないじゃないですか。責任や、役割かかえて生きてるやないすか。とちょっとモヤモヤしていたんです。(先輩すみません)

そんな僕が、すみません。グッドバイブスに目覚めたお話から。

僕は良くも悪くもひとりで、ずっと旅をしてきました。そして生きてきました。どんなときでもひとり。だから海外遠征をしているときも、悪天候にみまわれているときも、拳銃強盗に身ぐるみはがされているときや、あとも。そしてマウンテンバイクジャーニーやフリーコーヒーの旅を考えついたときも、ひとりで考えて、決断して、やってたんです。それには自分なりのプライドもあったし、自信もあった。

旅はひとりではできません。現地で受け入れるひとがいてくださるからこそ成り立つし、自分で判断して、責任をもって旅をして、そして感謝を忘れない。これは旅でも、旅行でも同じだと思っています。だから自分でもとても大切に思って旅をしてきたし、それは子どもたちと旅をするようになっても同じ。

けれどそれを大切にすることばかりを考えて、そして子どもたちに伝えて、限られた期間で自覚を持ってもらって旅をしてもらいたいみたいなところが僕にはありました。例えば現地の人と関わっているときとか、応援に来てくださったかたとの向き合いとか、他のメンバーが困っているときの振る舞いとか。あとは自分たちの旅なのに子どもたちがまったく心ここに在らずみたいなときとか。そんなときに叱ってしまっていたんです。それはやっちゃいかんよって。

例えばこんなことがありました。
マウンテンバイクジャーニーの春の旅で3人の子たちと鹿児島を目指して旅をしたとき。折り合いがうまくいかない同士のメンバーがいたんですよね。そして、このメンバーたちよくゴミを落としたり、忘れものしたり、やらかしていたんです。だから僕もスタッフもプリプリしていて。そんな感じのまま松山でいつもテントを張らせていただけるgrooveという自転車屋さんがあって、そこにキャンプを張らせてもらえることになった夜だったかな、翌朝だったかに、店主の平磯さんにぼく呼ばれて。

「まさやん。なんか最初にうちに子どもたちと来ていたときには、とっても楽しそうだったのに。今回はなんか笑ってないな。君たちが笑ってないと、子どもたちがどうやって笑えるんだい?」って言われて。いや確かにそうなんですけど。けど。大切なことも教えないといけないんですよ、みたいに思いながら、はい!ありがとうございます!ってお返事したと思うんです。このときの旅は、最後のほうまでオトナの僕たちも、もがきながら旅をしていたように思います。

毎回マウンテンバイクジャーニーはコースも、メンバーも変わります。だから僕も子どもたちと同じ真っさらなままで、今回の旅メンバーはどんな雰囲気になるだろうと旅のはじまりにはドキドキするんです。

そんな子どもたちとの自転車旅。あるときのメンバーがほんとに仲良しだったんですよね。中学生が男女でふたり、あとは小学生メンバー3人で。なんかみんなきょうだいみたいな雰囲気ですごく自然に自分を出せてるんです。そして、中学生たちがどんどん下の子たちに声をかけてリードしながら旅をすすめていくんです。こうであったらいいなといつも思い描いていたチームの姿がそこにあって。あれ?ぼくらなんにもしてない気がする。。。

けれどもチームの雰囲気もいいし、どんどん楽しそうに走っていくし、気づけばルートを変更してもっと寄り道して旅を続けようって。気づけば僕らの想像の先を走っていくような子たちになっていて。なんだこれは!ってなったんです。

僕が責任!限られた時間!役割!って自分に言い聞かせながら、子どもたちと向き合っていたときよりも。こうして自分たちがどんどんのびやかになっていく子たちとともに、笑っていたほうが、自分が「こうであってほしい」という子どもたちの姿、そして旅のカタチになっている。

そっか。僕が彼らにのぞむのではなく。教えるのでもなく。まず自分が彼らに「こうであってほしい」姿で旅をすること。ともに過ごすこと。なんだと。これが僕がバイブスを実感し、肝に銘じた瞬間です。先輩方!ごめんなさい!やっと分かりました!

子どもたちが自分たちでどんどんのびやかになっていきながら、何よりこの旅を、チャレンジを、仲間たちや出会うひとたちとの時間を楽しんで、ひとを、土地をリスペクトをしながら向き合い走っている。こんな瞬間が訪れるとき、ぼくは心が震えます。
ひとつの旅で1回おとずれるかな、みたいな瞬間。心が際限なく広がっていって、世界と重なるような、そんな不思議で、涙が出てくる感覚がときどきやってきます。

そのためには。まず自分が大きな意識と心で現実と、目の前にいる子どもたちといること。そして自分がのびやかで、おだやかで、笑顔でいること。それがないと始まんないんや、ということを今はとても大切にしています。
人生でたった2週間か3週間しか関われない子どもたちに「あのときのことがずっと心の支えになっている」と言ってもらえるような、そんな何かを一緒になってこの世界に生みだすことができるか。それがいまは自分の道しるべになっています。

これは自分の人生のひとつの目標になっています。
けれどこれが暮らしになると。家族が相手になると。また難しいんです。またやってしまった。けどなかなか認めたくないし、ごめんって言えんし。みたいになってくるんです。旅に人生を教わる。今となっては人生の半分を自転車旅で過ごしてきましたが。まだまだ、というかこれこそ終わることのない旅のように思います。

グッドバイブスで生きること。
それはどちらかというと「個」として「なりたい自分になる」「夢をかなえること」というよりも「この世界がこうであってほしい」を自分の心に宿して、だから「どんな自分で在るか」を道しるべに生きることのように思います。決して何がいい、わるい、ということでなく自分にとってはそれが心地よいように思うのです。こんなこと書きながら毎日のように奥さんには怒られるし、やっちまったということもよくあるのですが。

自分を探してひとり旅をはじめて。
世界に飛び出して、思いもしない世界の広がりに自分の役割を見い出し。
「人と関わる」という旅のなかで、ずっとひとりで旅するだけでは見えなかった新たな課題や自分をその中に見つけて。
何か人生の秘密というか、とても大切なことを見つけたような気持ちになっていても、いつもいい顔ばっかりではいられない家族や暮らしのなかで、もがき続ける。
けれどもそれこそが旅と言えるのではないかと思います。

自分は。見えている世界は。まだまだ変わることが、変えることができる
だからこそ。それはすでに旅なのだと思います。

世界がこうだから自分はどうするか?ではない。
こんな世界を願うから。誰かにこうあってほしいから。
だからこそ自分がその生き方を信じて歩むこと。
なんだか自分への言い聞かせのようになりながらの9回目。

こうして自分も大きな学びとなっているマウンテンバイクジャーニーの旅は、北海道から沖縄まで。そして東南アジアに韓国、台湾と9年かけて続いてきました。この旅を卒業した子は、いまでは100人をこえました。いまでは僕の人生にとってかけがえのないお仕事であり、ライフワークとなっています。サークルズもふくめ、たくさんの方々の支えがあって続けられている大切な旅。ほんとにこうして続けられていることに感謝を忘れず、これから続けていこうと思っています。

次は2027年の春。いまからどこに行こうかとドキドキがはじまっています。
旅のおともいよいよ次でラスト回。
最後は、旅をとおして生きていた、ぼくのいまの暮らしのことを書こうと思います。
どうか次回もお楽しみに。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

西川昌徳


「旅のおと」by Masanori Nishikawa

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