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旅のおと8

Words & Photos By Masanori Nishikawa

ぼくは自分に自信が持てず、将来の夢もない若者でした。けれど自転車旅と出会ってから、世界をひとり走り続けてきました。

その土地に暮らす人たちとの出会いから、心豊かに生きることとは何かを考えるようになりました。
日本の子どもたちに旅をとおして見た世界や出会ったひとの生きる姿を伝えたいと思うようになりました。
そして旅を仕事として生きるようになり、メキシコで拳銃強盗に身ぐるみをはがされ、現地の方々に助けていただき旅が続けられたときには、ひとりでできることなんて本当は無く、ひとは支えられ生かされているということを学びました。

そして、前回お届けしたフリーコーヒー自転車旅dailylifeでは、たった1杯のコーヒーが人と人をつなぎ、心が通う社会をつくることができる、自分の心の在り方が世界をつくると思うようになりました。こうして僕は、旅のなかで自分の道を見つけながら、こうであってほしい世界を思い描きカタチにする生き方をするようになりました。

そこには人生設計のようなものはありません。そのときどきで自分を試されながら、大きな壁にぶつかりながら、あがきつづけて、ときには流されて、思えば自分が1mmも想像しなかった将来を生きている「いま」があります。

そうしてカタチを変えながらも自転車で旅をすることを続けながら、僕はまた新しい旅をはじめます。

これまで何年も、子どもたちに学校での講演や授業で僕が旅で経験したことや出会った世界のことを伝えてきました。けれども本当のことなら、ともに旅をしながら自分の可能性や見える世界を広げてあげられるような、そうして子どもたちが自分らしく人生を歩むお手伝いをしたい。必要最低限のサポートだけで、自分たちのチカラで旅の日々をつくりながらゴールを目指す旅。

どうせながら、誰が聞いたって「そりゃすごい!」とびっくりされるような大きな自信となるような旅をつくりたい。それが子どもたちとのぼうけん自転車旅マウンテンバイクジャーニーです。

マウンテンバイクジャーニーのマウンテンは、子どもたちが乗る自転車をマウンテンバイクにしたかったこともあるんですが、もうひとつは日本一低い山から、日本一高い山へ。山をつなぐ旅をしようと思い立ってダジャレのつもりでつけました。

大阪の天保山(4,5m)から富士山の山頂(3776m)を目指す自転車旅。自分の頭のなかにはもうばっちりイメージができあがっていましたが、子どもたちの命を預かるということは決して簡単に考えてはいけないこと。アイデアをいろんなかたにシェアしながら、どうやったらカタチにできるのかの試行錯誤がはじまりました。

いままでサポートしてくださっていた企業から「今回ばかりはちょっとサポートは難しいかな。何かあったらいけないから。」と言われてしまいました。

スタッフとして協力してくれることになっていた世界を自転車で旅していた仲間からは「やっぱり子どもたちの命を預かる責任は持てないです」と断わられました。

そして、いちばん大切な参加してくれる子どもたちが集まらない・・・。
ぼくはもしかしたら自分勝手に、無理やりカタチにしようとしてるんじゃないか。そんな自問自答もしながら、それでも糸をたぐり寄せていくように、準備をしていきます。

お世話になっている先輩に「息子さんを預からせてください」と挨拶にいきました。
すがるような思いでメールした、世界自転車旅中でもうすぐアフリカから日本に帰ってくる仲間のかすみちゃんから「喜んで!」とスタッフのお返事をもらいました。
そして、3人の子どもたちとともに自転車旅に出られることになりました。

いま思えば、ほんとうにそこにはなにも確かなものはなくて。参加してくれる子たちやご家族、そしてスタッフをしてくれたかすみちゃんが僕のことを信じてくださったからこそ実現することができたんだなぁとあらためて思います。ほんとうにほんとうにありがとうございました。

毎日どこに泊まるのかも決まっていません。
決まっているのは、ゴールの日にちと場所だけ。
旅の毎日を子どもたちと一緒につくっていくマウンテンバイクジャーニーの旅がはじまりました。

しんどい。先が見えない。暑い。雨降り。
旅では自分の勝手がいかないことがたくさんあります。
そして、年齢も体力もちがう。気持ちひとつで動きも変わる。
子どもたちとの旅は、オトナの都合ではすすみません。

いままで自分がしてきたこと。それは確かに自分の限界に触れるようなチャレンジばかりでした。
けれどそれも「自分」のこと。
「誰か」に寄り添い、サポートしながら先に進んでいくことがこんなにも難しいことなんてやってみるまで思いもしませんでした。

その子の命を守ることはもちろんいちばん大切。それをしながら、その子の気持ちに寄り添い、そして目の前のつらさに押しつぶされそうになったり、不安になったりしたときには、もう少し先を一緒に見つめながら伴走していく。自分が繰り返してきたことを、またほどいて、いちから目の前の子たちに分かるように伝えていく。

それは僕にとって、紛れもなく挑戦と言えるものでした。常に葛藤し、自分の思いもしないところで決断を迫られる自分がいて、ソワソワしながらも歩んでいく。
目の前にいる子どもたちの心の揺らぎと同じように、また別の視点ではあるけれども、ドキドキ不安になっている自分がいる。

それはまぎれもなく。自分の知っている世界の外側へ踏み出す新たな冒険でした。
たくさん声を荒らげてしまった。あのときこうしてあげられなかった。自分のほうを優先してしまった。

今年9年目をむかえたマウンテンバイクジャーニー。はじめのころを振り返ると「もっとこうしてあげられたなら」ばかりです。
そのときの自分なりの全力で向き合っていたけれども。そのときの自分にはまだ見えていないものがあり、至っていなかった心がありました。
それでも一緒に旅をしてくれたみんな。スタッフとしてともに歩んでくれた仲間たち。ほんとうにありがとう。そしてごめんね。

旅の途中。これまでお世話になってきた仲間たちが応援に駆けつけてくれました。お家にも泊めていただきました。
そして道中も数え切れないくらいの出会いとサポートをいただきました。この子どもたちとの自転車旅でも、やっぱり僕らの心を照らしてくれたのはこうした人との出会いと関わりだったと思います。

つらくて涙を流しながら2200mの高さにある富士山の5合目まで走り、自転車を置いて最後の富士山頂を目指します。

旅の終わりのほう。僕は子どもたちとどんな会話をしたんだろう。もう記憶もおぼろげですが、もう終わってしまうのか、そんなふうに思ったことは覚えています。

そうしてみんなで揃って富士山頂へゴールし、そこから歩いておりた5合目では送り出してくださったご家族と再会することができました。

きっときっと、親御さんすごい覚悟で送り出してくださったんだと思います。いまならそのことがはっきり分かります。

そしてあのときは「やった!みんなでやりきることができた!」という思いでいっぱいだった僕は、お迎えに来てくださったご家族みなさんと子どもたちとの記念撮影の写真をあらためて見直してみて「子どもたちほんとにホッとしたんやなぁ」と思いました。

そうだよね。たった12日間だったかもしれないけれど、みんなにとっては本当の大冒険だったよね。一緒に旅をしてくれて、あきらめずに最後まで走ってくれてほんとうにほんとうにありがとう。

(この初めてのマウンテンバイクジャーニーに参加してくれた大地は、大学で探検部に入り、原稿を書いているいま中央アジアをひとり自転車で旅をしています)

旅が進んでいくごとにたくましくなっていく子どもたちの表情。
日焼けしてどんどん黒くなっていく、そして大きくなっていく笑顔。

そしていろんなトラブルも、思いがけないようなご褒美も毎日やってくる子どもたちとの旅の日々。

その様子をSNSで見守っていただいたことが、次へのバトンとしてつながっていきました。

翌年からは「この旅に参加したい!」とたくさんのご家族、子どもたちから連絡をいただくようになり今では年3回の実施となりました。

歴代のメンバーたちが、新たにやってきた旅のメンバーたちを応援にかけてつけてくれるようになり、サポートいただける企業も増えました。
スタッフとしてともに東南アジア3カ国を旅してくれた女の子が、いまは僕の奥さんです。

そして、2年目からは僕が旅をしてきた海外にも子どもたちを連れて自転車旅に出かけるようになりました。

いまではスタッフはマウンテンバイクジャーニーを卒業していった子たちが担ってくれるようになっています。

参加する子たちには、このマウンテンバイクジャーニーは一生で1回きり、とお願いをしています。

もちろん何回でも参加してもらえたら、コミュニティとしてもっと深く広がっていくし、その子と人生で関われる時間も増えます。
けれども「限りがあること」で、ほんとうにその瞬間しかないことを、もう2度とはやってこないことを、感じながらともに旅ができます。

そうしてこの旅で、仲間たちとともに歩み、自分らしく、のびやかに、サイコーの笑顔で旅をして卒業していく子たちが。
この旅で経験したこと、見てきた世界をその心に宿して、それからの人生を歩んでいくこと。
そのことは、僕にとって勝手なことですが「希望」そのものです。
「しんどくなったらいつでも帰っておいで。待ってるからね。」そう伝えてそれぞれの人生に送り出します。

彼らがほんとうにこれだ!というものを見つけたとき、思い切ってそこに踏み出せる自信につながるように。
旅を終えた彼らの姿が、まわりの子たちに影響を与えて、そうして希望のバトンがつながっていくように。
そんな願いを勝手ながらですが思っています。

そして送り出してくださる親御さんには。
ゴールで我が子と再会するそのときまで、どうかSNSをとおして見守ってくださいとお伝えします。

信じて待つということ。思いを馳せるということ。
そして旅にくる子たちも同じだと思います。きっと寂しい思いもすると思います。
それでもそれぞれが思いを馳せて、お互いを信じて歩むということ。それは祈りだと思うんです。
なので毎回ゴールで感極まってしまうのは、僕のほうです。毎回のゴールでそれを感じるから。

SNSでも毎回多くのかたにサポートをいただき、また旅のあとには感想をいただきます。
今回の旅も感動をありがとう。

みなさんにとっては会ったこともない子たちだけれど。それでも子どもたちが心からなにかに打ち込む姿、挑戦する姿というのは、ぼくはオトナの心を大きく揺さぶり、チカラを与えるものだと思っています。
若者がチャレンジすることを、オトナみんなが応援できるような世界。
ぼくはマウンテンバイクジャーニーをとおして、そんな世界をカタチにしたい。

これがぼくのライフワークとしていまも続いているマウンテンバイクジャーニーのお話です。

次回は、そんなマウンテンバイクジャーニーでのドラマをいくつか紹介できればと思っています。
今回も読んでいただきありがとうございました。


「旅のおと」by Masanori Nishikawa

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