道に合わせて、自転車を考える
自分が自転車で一番よく行く場所には、どんな道が広がっているのかを分析する。
これから行ってみたい場所の道を想像し、それを自転車に反映していく。
ドレスアップではなく、チューンアップ。
ホビーライダーの私にとって、自転車と道が重なる時ほど、贅沢で気持ちのいい瞬間はありません。
自転車を変える理由
私が新しい自転車を組んだり、パーツの仕様変更をしたくなる動機は、ほとんどの場合、住環境の変化です。
思い返せば、私がCirclesと出会ったきっかけもそうでした。
セレクトショップに勤務していた時代、大阪から名古屋へ引っ越した際に、普段の足として、そして趣味のカメラの行動範囲を広げたくて、KONAのRove STを手に入れたのが始まりでした。


名古屋で広がった未舗装路の世界
その後、それまでの趣味だったカメラを置き去りにするほど自転車の魅力にのめり込み、恵那や豊田の山深い未舗装路を駆けずり回るようになると、より荒れた未開拓地へ踏み込める太いタイヤの自転車が欲しくなりました。
そこで、ドロップバーとマウンテンバイクに近い足回りを備えた、SKLAR Super Somethingを手に入れたのです。
神奈川への移住と、走り方の変化
そしてCircles Tokyoの立ち上げに伴い、神奈川県へ移り住んだことで、再び環境は変化します。
多摩川を軸に、奥多摩や宮ヶ瀬方面へ足を伸ばすようになると、自ずとオンロードを走る比率が高くなりました。
それに合わせて、SKLARも大きく組み替えました。

SRAMのマウンテンコンポであるGXをバーエンドシフターで動かしてワイドレンジなギアレシオで走破性を意識した組み合わせ。

東葛飾という新しいフィールド
昨年、私は千葉県の北西部に位置し、柏市や松戸市がある東葛飾(ひがしかつしか)と呼ばれるエリアへと拠点を移しました。
利根川と江戸川に挟まれたこの地域は、日本一広い台地と、2つの河川の堆積物で形成された低地からなる、非常に高低差の少ないフラットな地形です。
高台には住宅地。
江戸川沿いには延々と続くようなグラベル。
低地には江戸時代に整備された広大な田んぼや、手賀沼のような沼地とともに、グラベルが縦横無尽に張り巡らされています。
東京の東側からは最も近くグラベルが楽しめる地域であり、世界最大のグラベルレースであるUnbound Gravelの練習にくる人も多いグラベルスポットです。




東葛飾を気持ちよく走るために
この場所で気持ちよく走るには、どんなチューニングが必要なのか。
グラベルの突き上げを滑らかに均していく快感をもっと楽しむため、もっとスピードに乗せることができれば。
ペダルを踏み込んだ力が即座に、余すことなく後輪の推進力へと変換され、台地へ上がる短い急勾配を一気に駆け上がることができれば。
時に現れるシングルトラックもしっかりとこなせるキャパシティもあればなお良い。
レースに勝つための速さではなく、自分自身が気持ちよく走るための速さ。
気がつけば、ない袖を振ってカスタムオーダーのチタンバイクを手に入れていました。

Seven Cycles
では、先述した私の要望を叶えてくれるのは、どのバイクなのか。
もちろん、様々なグラベルバイクを検討しました。
しかし、手持ちのパーツを載せ替える前提で考えた際、ROCKSHOXのサスペンションフォークの存在がネックになりました。
このフォークは肩下寸法がグラベルフォークよりも長く、一般的なグラベルフレームにそのまま組み込むと、ジオメトリーが破綻してしまいます。
そして将来的には、リジッドのカーボンフォークも使いたい。
この「サスペンションフォークのストロークを前提としたジオメトリーでありながら、リジッドフォークに差し替えても破綻しない設計」というわがままを叶えるためには、フルオーダーのフレームを作るのが最も確実なアプローチでした。
設計思想まで選べるブランド
次に、様々なカスタムオーダーブランドのリサーチに入りました。その中でSeven CyclesのHPを見て、衝撃を受けました。
そこにはシートステーやチェーンステー、ディレイラーハンガーに至るまで、フレームを構成するあらゆる要素に何通りものオプションが用意されており、それぞれが物理的にどのような効果をもたらすのかが、事細かに説明されていたからです。
例えばシートステーひとつをとっても、6種類の形状に対し、厚みや外径の異なる4種類のチタンパイプを組み合わせることで、カスタマーの理想とする乗り心地を正確に構築していきます。




乗り手から始まるオーダープロセス
オーダーシートに記載する情報量も圧倒的です。
詳細な身体情報や使用予定のコンポーネント、各パーツの寸法はもちろん、現在乗っているバイクのジオメトリーに対する自分の感覚、そして次のバイクに求めている具体的な乗り方など、あらゆる情報を求められます。
このあたりのオーダープロセスの詳細については、また別のブログで紐解いて解説しますので、ぜひご期待ください。
そして、1人のカスタマーのためにチタンのパイプを削り出し、カスタムバテッドの工程からフレーム作りを始める。
これほどまでに乗り手のニーズに対し、論理的かつ真摯に向き合うブランドを、私は他に知りません。
私はSeven Cyclesに、次のバイクを託すことにしました。







Evergreen SL
組み上がったのがこちらのEvergreen SL。
コンポーネントはSHIMANOのGRX820。
GRXの12速化に伴って10-51tというスーパーワイドレンジなカセットが使えるようなっています。UNSTOPPABLEというコンセプトの通り河川敷の高速フラットダートから筑波山のトレイルまでと、その行き先を制限させません。
ホイールには惜しくも廃盤となってしまったCHRIS KINGのARD44。
フロントにSCHWALBE G-One RX Pro、リアにG-One R Proという前後異形のトレッドの組み合わせはぬかるんだ道ではしっかりとフロントが食いついてくれ、転がり抵抗の低いリアタイヤは路面の状況を問わず高速巡行を可能にしてくれます。





走り出してすぐにわかったこと
組み上がったEvergreenで東葛のグラベルを走ると、自分の想像以上のバイクであることにすぐ気づきます。
特にグラベルでの滑らかさは筆舌に尽くしがたいものがありました。
フロントサスペンションの働きもさることながら、「Moto Seat Stays」と呼ばれる立体的に曲線を描くSeven Cyclesならではのシートステーが、路面からの突き上げを緩和しながら見事に追従します。
柔らかいだけではないフレーム
では、ただ柔らかくて乗り心地がいいだけのフレームなのかというと、そうではありません。
Seven Cyclesでは「ドライブトレインの剛性」と「乗り心地」が全く別の指標で管理されています。
今回、私は「アルミロードに匹敵するドライブトレインの剛性」をオーダーしました。
ペダルの踏み込んだ力は、路面を追従する後輪へと伝わり、路面状況を問わず間髪入れず加速します。
私が求めていたものを想像を超えた次元で叶えてくれました。



変速フィールを支えるディレイラーハンガー
そして、スペック表ではあまり語られませんが、SEVENでしか体験できない感覚があります。
それが、ディレイラーハンガーの剛性です。
スルーアクスル用一体型ハンガーは、通常の交換式ハンガーの4.3倍の強度を持ちます。
メーカー公式が「これまで破損したケースは一度もない」と公言しているほどの堅牢さです。
転倒などでハンガーが壊れないというのは、長く乗り続ける道具としての大きなメリットですが、それ以上に驚かされたのは変速フィーリングのダイレクト感でした。
変速時、動こうとするディレイラーのトルクを分厚いチタンの無垢材が微動だにせず受け止めます。
特にペダリングの力がかかりやすいローギア側へチェーンを押し上げる際、STIレバーのストロークに対してラグなく瞬時にディレイラーが呼応する硬質なシフトフィールは、今まで乗ってきたどのバイクでも感じたことのない感覚です。
Chris Kingのハブサウンド然り、機能が感覚を通して伝わってくる気持ちよさも趣味として自転車に乗る上で非常に大きな要素ですよね。



変わる生活に、応え続けてくれる道具
自転車は、乗り手の生活環境や遊び方の変化に合わせて姿を変えていく道具です。
絶対的な寸法だけでなく、チューブの一本一本の肉厚まで調整されたこのチタンフレームは、パーツを変えるチューニングでは叶えられない領域までパーソナライズされたバイクとなるでしょう。
ご自身の環境や身体に完全にフィットした、使い続けられる確かな道具を探している方は、ぜひ一度ご相談ください。
この一台が、その答えの一つの形を示しています。

| Frame | SEVEN CYCLES Evergreen SL |
| Fork | ROCK SHOX Rudy Ultimate 40mm |
| Compornents | SHIMANO GRX RX820 |
| Headset | CHRIS KING InSet7 |
| Bottom Bracket | CHRIS KING ThreadFit 24 BB |
| Handle Bar | WHISKY Spano |
| Bartape | LIZARD SKINS Bartape V2 DSP / 1.8mm |
| Stem | THOMSON X4 Stem |
| Seat Post | THOMSON Masterpiece C |
| Saddle | SELLE ITALIA Flite 1990 |
| Wheel | CHRIS KING ARD44 |
| Tire / Front | SCHWALBE G-One RX Pro 45c |
| Tire / Rear | SCHWALBE G-One R Pro 45c |

